篠﨑靖男氏「文化とまちづくりについて」講演内容

6月27日(木)「オーケストラ・ムジカ・チェレステ」の指揮者、篠﨑靖男氏が、日野町のまちづくりを考える有志の集まり「わくわくHino会議」に講師として招かれ、「文化とまちづくり」について熱のこもったお話をされました。当日のお話の内容を、ほんの一部ですがお届けします。

■まちが文化をつくる。


「文化がまちをつくる」っていうテーマでお話をさせていただくのですけれども、
文化がまちをつくりません。まちが文化をつくるのです。
その文化というのは、皆さんお一人お一人がつくるのであって、
文化が先にあって、皆さんが出来ていくわけではないんですよ。
     
僕は芸術家ですが、皆さん「芸術」って必要なものなのでしょうか?
「芸術」が必要だという前に「娯楽」って必要でしょうか。
たとえば、お金をかけて東京の国技館まで相撲観戦に行きました。
それで何か人生が変わるでしょうか。
接待のためなどであれば別として、私たちは観たくて観たくて仕方なくて
相撲を観るじゃないですか。
たとえばコロッケさんが今度わたむきホール虹に来られます。
ステージを見て、それで皆さんの人生が変わりますか? 
だけど、笑いたくて見に行く。
お酒を飲みたくて飲む。お酒を飲んだって翌日は何も変わってません・・・まあストレスが発散できるかもしれませんが。
実は、芸術も、娯楽の一種なんですね。
楽しむ事に感動が加わるのが芸術なんです。

 

■いつも続けていなければ「文化」ではない。

日野は、オーケストラをやろうという素晴らしい町です。
本当は、毎年やりたいんですけど、お金がかかりますので、
今のところ2年に1度しかできていません。
でも2年に1度でも継続できるのは大きなことなんです。
たとえば“ホール開館記念”で、一度だけ大きなものをどーんとやる。
もしくは“市制30周年記念”どーんとやる。
これはね、イベントであって文化じゃないんです。
これは、さっきお話しした「まちが文化をつくる」というものではないんです。
「いつも続けている」ということが文化であって、
例えばの話ですが、
「ああ、100年前には日野祭で曳山を曳いたもんや」っていうのは
文化ではないのです。それは過去なんです。
今もなお、日野祭を盛り上げている事こそ、誇るべき文化なんですよ。
文化っていうのはいつも生きていなければいけないので、
継続しなければいけない。
そのためにはどうするかっていうと、
常に地元の方が作らなくてはいけないのです。

■本当に尊敬されるのは、お金より「文化」を持っている場所。

僕は思うんですけれども、文化芸術ってね、
作って定着させるのはものすごく時間がかかるんですよ。
お金もかかるんですよね。
でも、「文化があるまち」「文化がないまち」、
どっちが高く評価されると思いますか?

僕が3年間いた静岡では、どんどん人口が減っているんですよ。
やっぱり東京に近いので。第2次産業がどんどん減っています。
中規模の工場などは人を雇うのが本当に大変です。
では、第3次産業、ITであるとか、
そういう頭脳に国内外から来てもらうときにどうしたらいいんだろうか、と考えると、
実はそういう方々はお金だけでは来ないのです。
娯楽の部分、芸術の部分・・・
「ここにはオーケストラがあるな」「展覧会があるな」「地域のお祭りがあるな」
そういうものに外国の方だったり、学者さんなどは惹かれて来るので、
オーケストラが地域を盛り上げるという事に、
静岡の政治、経済界も大きな注目をしており、
それがオーケストラのバックアップに結びついていました。

僕は海外によく行くのですが、そんな事をまざまざと感じるのです。
先日も1ヶ月ほど南アフリカに行っていました。
やっぱり海外に行くと、いくらお金を持っている国でも、
最終的には文化を持っていないと尊敬されないんですよ。
日本だと文化があり、「京都はいいね」とかそういう話になって、会話が成立します。
お金をいっぱい稼いでいるよりもそういう事を、
外国の方は大事になさるところがあって。


フランスとかドイツは、GDPでいうと日本よりも下ですが、
世界的にいうと尊敬されている度合いが全然違うんですよね。
何故かといえば、たとえば皆さんがドイツ語を勉強しようと思ったら、
「ゲーテ・インスティテュート」、
フランス語なら「アンスティチュ・フランセ」という機関が京都にあるわけです。
各国の語学教育や文化交流に努める政府公式文化機関で、
日本の主要都市や世界中のいろいろな場所にあります。
これらの機関は文化広報をしているんですね。
文化広報をするということは、その国が文化を大切にしているということなのです。
そうすることでその国の価値観を表現でき、皆さんに尊敬される。
そういう国だったらちょっと、
「引っ越して仕事してもいいな」という考えにもなってくるらしいのです。

 




日野町も「引っ越して仕事してもいいな」と思われるまちであれたら素敵ですね。

文化について、皆様はどうお感じになったでしょうか。



2019年07月26日